FOOD TEXTILE STORY vol.1

食品とアパレルの架け橋に。
持続可能なアップサイクルを。

2022.06.15

豊島株式会社
FOOD TEXTILE プロジェクトリーダー

谷村佳宏

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ヒーロイメージ

豊島株式会社
FOOD TEXTILE プロジェクトリーダー

谷村佳宏

作り手の想いはどこへ。
アパレル業界の強い危機感を抱く。

商社への就職を希望していた谷村。鉄でもエネルギーでもない。元々服が好きだったこともあり、身近な製品でわかりやすい繊維商社で働くことを選んだ。入社以来がむしゃらに突っ走ってきたが、30歳を前にした2014年、業界自体に何か違和感と危機感を覚えた。
「このままでいいのか?いやダメだろう…」。
「安いファストファッションが急伸し、低価格な商品を大量生産し、トレンドに合わせてどんどん廃棄していく。そのサイクルが当たり前のようになり、買う側も値段で選び、作り手である私たちも、廃棄することを前提で作っている。それって当たり前のことではないですよね」。
メーカーから依頼を受け、製造工場に発注書を送る。そこに自分たちの作り手としての商品への想いはあるのか?谷村は何かが違うのではと、立ち止まった。

谷村さん画像

「新しい服を選んで着ることは、ワクワクすることです。そんな幸福感や高揚感といった特別な想いを喚起してくれる服であるはずなのに、このままでは業界がダメになってしまう。自分自身の将来の不安さえ感じるようになってしまっていました」。
何かヒントが欲しいと、異業種交流会に参加。そこで出会ったのが大手食品メーカーのCSR担当者だった。カットサラダをはじめとする多くの商品に使う大量の野菜。その残渣の有効活用に頭を悩ませていた。「食品ロス削減のために、野菜の残渣を染料にできないだろうか?」。持ちかけたのはその担当者だった。

こだわりを持つ染色ラボ会社との出会いがプロジェクトの鍵に。

「確かに天然染料で染めた生地はありますが、従来は色落ちの問題など、ビジネスとして成立させるのは難しいと思っていたんです。ただ、大量生産、大量廃棄という同じ悩みを持っている者同士、何か一緒にできることはないかと考えました。そのとき、ふと頭によぎったのが、長年の当社のパートナーである染色ラボ会社の社長でした」。
大手自動車メーカーに勤務していたが、コストに縛られない、納得のいくものづくりがやりたいと、染色技術を作り上げた異色の経歴の持ち主だ。
「食品残渣を回収したもので染めたからって売れるもんじゃない。そこにどんな付加価値を与えるかを考えなければならない」。常に業界の遥か先を見据える彼の考え方に、谷村は大きな刺激を受けているという。

このプロジェクトを進めるにあたり、軸となる価値は何かを考えた谷村。 一つ目は「天然染料」。いわゆるテキスタイルの原点回帰。

テキスタイル画像

「元来、天然由来の染料で染めた布で体を守るというのが衣類の役割です。こうして作られた衣類を日本人は大切に着続けていました。もう一度、大切に着たいと思ってもらえるものを作っていきたいんです」。

もう一点は、染色ラボ会社の社長がこだわり続けていた国内製造だ。
「今や9割以上が海外で縫製を行っているアパレル業界において、国内の染色工場とのみ取引をしているのが、この会社でした。食品残渣の回収から染色、テキスタイルに至るまで、すべて国内で、日本独自の技術力で作り上げていくことに意義があると賛同し、染色を引き受けてもらいました。
“環境にいい取り組み”とチャレンジする他社もありましたが、あまりにも手間がかかるため、ほとんどが長続きはしませんでした。私たちが実現できたのは、染色に真っ直ぐに情熱を注ぐ彼の存在があり、また彼に依頼し続けた私たちの粘り強さがあったからかもしれません」。

こうしてトライアルとして食品残渣で染めたテキスタイルを展示会で発表。いいものはできたが、果たして事業として成り立つのか、不安を感じていたという谷村。その背中を押したのが社長の一言だった。
「やりなさい」。
2015年2月「FOOD TEXTILE」プロジェクトは始動した。

大手企業とのコラボレーションで認知度もアップ!

「正直、とても複雑な作業でコストがかかります。それでも付加価値を付け、その価値に見合うものであればきっと売れます。重要なのがブランディングです。まずは誰もが知っている企業と組み、認知度を上げること。どこの誰が作った食品残渣で染めるか、それをどのメーカーが商品化するか。
次にイメージを大事にしました。“ステキを狙う”がキーワードです。当初、こちらから色々なメーカーに声を掛けましたが、なかなか商談はまとまりませんでした。そんな中、あのコンバースのサステナブルシリーズ『converse e.c.lab(イーシーラボ)』の立ち上げのタイミングと偶然重なり、受注が決定!嬉しかったですね」。

コンバース画像

その後はカゴメ、抹茶の製造元「南山園」、ブルーボトルコーヒーなど、FOOD TEXTILEの理念に賛同する20社以上の名だたる企業とのコラボレーションが次々と決まっていった。
プロジェクトが進行する中で、技術的な困難も経験した。トマトは赤ではなく黄色に、赤カブはなぜかブルーに染まった。またコーヒーの抽出殻は油分が多すぎて、染色釜が激しく汚れた。一方で、pH(ペーハー)を調整することで、一つの食材からさまざまな色展開が可能になることもわかった。
「こちらが提案する色の中からお客さまに選んでいただく。それまではただ依頼を受けるだけの一方通行だった仕事の流れが変わりました」。

一つ一つ丁寧に大切に育てていきたい。

ようやく事業として成り立ち始めたFOOD TEXTILEプロジェクト。社内的にも注目されるようになり、テキスタイルだけでなく、糸を販売する「原糸部隊」からも依頼を受けるようになった。部署の枠を超えての取り組みに、谷村は大きな手応えを感じている。 今後はカーテンや椅子張り、寝具などのインテリアへの活用にも力を入れていくという。さらに染める生地も、綿以外に麻やポリエステルなどにも広げている。 「SDGsやサスティナブルというワードとの親和性が高いプロジェクトですので、今、注目されるのはわかるのですが、このプロジェクトを一過性のものにはしたくないんです。食品メーカーとアパレルなどのメーカー、作り手と使い手の思いを繋ぎ続けることが私たちの役目だと考えます。丁寧に、ちゃんとしたものを作って届ける。決して急がず、一歩一歩慎重に、息の長いプロジェクトとして進めていきたいと思っています」。 リサイクルではなくアップサイクル。その可能性は大きく広がっている。

糸画像

TEXT/ MASHIMO SATOKO
PHOTO/ SUZUKI AKIHIKO

FOOD TEXTILE Item

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